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東京家庭裁判所 昭和43年(家イ)1975号 審判

申立人 ジョン・イー・コールマン(仮名)

相手方 朴令愛(仮名)

主文

申立人と相手方間に一九六五年一一月一日成立した婚姻が無効であることを確認する。

理由

一  申立人は主文と同旨または申立人と相手方間の婚姻を取消す旨の審判を求め、その事由として述べる要旨は

(1)  申立人はもと日本人である申立外大川民子と婚姻していたが、同人とは昭和四〇年(一九六五年)一一月二六日東京家庭裁判所において調停離婚した。

(2)  ところが申立人はそれに先だつ昭和四〇年(一九六五年)一一月一日相手方と韓国京城において婚姻したものであるから、申立人と相手方との婚姻は重婚となる。したがつて、申立人と相手方との婚姻は無効または取消されるべきものであり、右婚姻の無効確認または取消を求めるため、本申立におよんだ。

というにある。

二  本件について昭和四三年四月二五日の調停委員会による調停において、当事者間に主文と同旨の合意が成立し、その原因についても争いがないので、当裁判所は、本件記録添付の婚姻証明書、各外人登録証明書、ならびに申立人相手方各本人審問によつて必要な事実を調査したところ、申立人の前記申立ての事由のとおりの事実および申立人は昭和二七年以前より民間人として日本に居住し、今後も相手方ともに日本に居住するものであることが認められる。

前記認定の事実によると本件は申立人はアメリカ合衆国の国籍を有し相手方は韓国の国籍を有するものであるから、いわゆる渉外事件に属するところ、申立人と相手方はいずれも日本に住所を有するものと認められるから、日本の裁判所が本件につき裁判権を有しかつ当裁判所が管轄権を有することは明らかである。

そこで、本件事案の準拠法について考察すると、前記認定の事実によると重婚に該当する場合であるから、婚姻の成立要件に関する法例第一三条第一項により、各当事者の本国法によつて申立人と相手方の婚姻が効力を生じているかどうかを判断するべきことになる。そこで申立人の本国法であるペンシルバニア州法によると、重婚は婚姻の無効原因とされており、相手方の本国法たる韓国民法八一六条一号によれば婚姻の取消原因に該当する。このように、婚姻当事者の本国法において婚姻の成否につき、一方では無効とし他方では取消し得るものとしている場合には、国際私法の原則によれば婚姻の効力をより否定する法によつて婚姻の効力を決すべきものと解されるから、本件婚姻は申立人夫の本国法により無効と判断される。

よつて、当事者間に成立した前記合意を正当と認め、調停委員沢木敬郎、および同佐藤光子の各意見を聴き、家事審判法第二三条に則り、主文のとおり審判する。

(家事審判官 野田愛子)

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